離乳食に時間がかかるのはなぜ? ― 食事介助だけでは解決しない、0歳児保育のリアル
― 月齢別の目安・切り上げの判断と、食事時間を安定させるために保育でできること ―
離乳食の時間について、こんな声をよく聞きます。
✅全然食事に集中しない
✅すぐ飽きてしまう
✅5分でイヤイヤ…もう終わりでいい?
✅気づいたら40分経っていた
食事時間の悩みは、家庭だけの問題ではありません。
保育者、保育園栄養士、ベビーシッターなど、育児支援に携わる立場でも判断に迷う場面は多いはずです。
このコラムでは
✔ 離乳食の食事時間の目安
✔ 切り上げの判断
✔ 集団保育という現実
を整理しながら、「食事時間を安定させるために、保育の中でできること」についても、最後にお話しします。
赤ちゃんは、どれくらい集中できるのか
まず押さえておきたい前提があります。
乳児期の集中力はとても短く、発達心理学の分野でも注意は長時間持続するものではなく、移ろいやすいものとされています。
現場でよく使われる「集中できる時間は《年齢+1分》」という考え方は、厳密な数値エビデンスというよりも発達の目安としての指標であり0歳児の離乳期において「短時間で集中が切れる」ことは発達的に自然な反応です。
月齢別・離乳食の食事時間の目安
ガイドラインに「時間」は書いていない
厚生労働省およびWHOのガイドラインでは、離乳食1回あたりの「分単位の時間」は明示されていません。
一方で、子どもの食意欲が保たれやすい時間帯として、専門職の実践では以下の目安が共有されています
-
5〜6か月:10〜15分
-
7〜8か月:15〜20分
-
9〜11か月:20〜25分
-
12か月以降:25〜30分
これらは「この時間食べさせるべき」という基準ではなく、「赤ちゃんが意欲的に食べられ無理のない食体験を成立させるための時間の目安となります。
食事に時間がかかる
=問題、ではない
離乳食中に見られる
✅触る
✅落とす
✅眺める
✅口に入れて出す
いわゆる「遊び食べ」。
これは赤ちゃんにとって、食べることを通した探索活動でもあります。
そのため、体調や気分によって40分かかる日があっても問題はありません。
ただし、毎回長時間になる場合は、
「赤ちゃん」ではなく環境や条件を見直す視点が必要です。
食事時間が長くなるときのチェックポイント
支援者として見返したいポイントは、
✅食形態が発達段階に合っているか
✅全体量が多すぎないか
✅テレビ・カーテン・シーリング照明など動く刺激が視界に入っていないか
✅興味のあるおもちゃが近くにないか
「食べない子」ではなく、
集中しづらい状況がつくられているだけのことも少なくありません。
ここが「切り上げどき」のサイン
離乳食を終える判断として、
次のような行動は重要な目安になります。
✅口を開けなくなる
✅顔をそむける
✅口に入れてもすぐ吐き出す
✅体を反り返す
これらの仕草が多くなると
「わがまま」ではなく、「今はもう難しい」という身体からのメッセージ。
ここで無理に続けるより、切り上げることで次の食事への意欲が保たれます。
もちろん、先ほどのほうな仕草がある時
その背景には、こんな理由が隠れていることもあります
▶何を掬ったのか見えず、予想と違って驚いた
▶姿勢保持がつらくなってきた
言葉で説明できない分、行動でサインを出してくれるので、赤ちゃんに寄り添いながら私たち大人はサポートしていきたいものです。
椅子に座って食べることは、実は重労働
大人にとっては
当たり前の「椅子に座って食べる」という行為。
しかし赤ちゃんにとっては、
-
座位を保つ
-
口を開ける
-
舌を動かす
-
咀嚼・嚥下を行う
これらを同時に行う、全身を使った運動です。
疲れて集中が切れるのは、自然な反応でもあります。

食事時間を安定させるために、保育でできること
集団保育という現実……
0歳児保育では、保育者1名に対して子ども3名。
これが国の定める配置基準です
近年、離乳期の窒息事故への注意喚起が進み、食事の時間だけは大人1名・子ども1名の
いわゆる「1対1」で対応している園もあります。
これは本当に、とても良い取り組みです。
ただ一方で、園児の人数や職員配置によっては、
最初の子が食べ終わってから次の子、
さらにその子が終わってから三人目、
という流れになり、
結果として、同じクラスの園児でも
食事開始時刻が1時間近く異なる
という状況が生まれることもあります。
まだ食べていない子が、目の前で食べている子を見ながら待つ。
そんな環境配置になってしまっているケースもあり、とても残念に感じます。
これは、保育士の技量の問題ではありません。
制度と現実のズレによる、構造的な問題ではないかと考えます。
食事時間を支えるのは日中の保育である
日中の保育において、
-
体を十分に使う遊び
-
姿勢を切り替える経験
-
座って集中する体験
が積み重なっている場合、食事時間の姿勢保持・集中は安定しやすいとされています。(厚生労働省:保育所保育指針)。
「食事に時間がかかる」「集中できない」という悩みに対して“食事の時間だけ”をどうにかしようとしていることも、現場を見ていると感じます。
ですが実は、食事時間を安定させる鍵は、その前後の「保育そのもの」にあります。
特別な訓練ではなく、
-
椅子に座って絵本を見る・読み聞かせてもらう
-
短時間の机上活動を行う(製作や手遊び)
-
床で全身を使った遊びを十分に行う(静と動があるわらべ歌遊びもおススメ)
-
食事と同じ視線・高さを遊びで経験する
といった日常的な保育の積み重ねが、食事時間を支える土台となります。
ずっと同じ保育室で、動きが制限され、まるで鳥かごの中のような環境になっていないか。
これは、食事の問題であり、同時に保育環境全体の問題でもあります。
本来、日中の遊びや活動がしっかり積み重なっていれば、1対3は正直大変ではあります(現場は、常に戦場…)が、状況によっては1対2で見られる場面が増えたり、良い意味での“効率”が生まれることもあります。
「結局、
保育で何をすればいいの?」
そうモヤっと終わるのではなく、
-
この遊び、取り入れてみよう
-
この活動、食事につながるかも
-
座る時間、少し工夫してみよう

そんなふうに、次の一手が見えることが大切ですね。
食事時間を整えることは、スプーンの持ち方や量の調整だけではなく、
その前の「一日」をどう過ごすかに、大きく左右されているのです。

食事の時間が長い、集中できない、すぐに立ち上がってしまう。
そうした姿の背景には、
「食べ方」や「量」以前に、
その子の身体の使い方や感覚の育ちが関係していることも少なくありません。
保育食支援士®の離乳食講座では、
「◯か月だからこの形態」「この時間内に食べさせる」といった
月齢やガイドラインありきの支援ではなく、
その子が今、
・どんな姿勢なら安定するのか
・どんな感覚に戸惑いやすいのか
・食事のどこで疲れやすいのか
といった視点から、
離乳食や食事の関わり方を整理していきます。
0歳児クラスの担任の保育士さん、
乳児のみの小規模園で働く管理栄養士さんなど、
毎日、同じ月齢の子どもたちと向き合っている支援者の受講も多い講座です。
「時間や量で判断することに、違和感がある」
「集団保育の中で、どう支援すればいいのか整理したい」
「食べない理由を、発達や感覚の視点から捉え直したい」
そんな方にとって、
保育食支援士®2級の学びも、
一つの選択肢として知ってもらえたらと思います。
▶ 受講生の声・講座の詳細はこちら
https://kodomohoiku.org/610p/
参考文献
① 厚生労働省
『保育所保育指針』
「乳児の保育においては、子ども3人につき保育士1人を配置することを基本とする。」
② 日本小児科学会
「乳幼児の摂食・嚥下機能の発達」関連資料
「摂食行動は姿勢保持、体幹の安定、口腔機能の協調運動が相互に関係して成立する。」
③ 厚生労働省
『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)』
「子どもの示す行動を空腹・満腹・疲労などのサインとして受け止め、無理に食べさせないことが重要である。」
④ World Health Organization(WHO)
Guiding Principles for Complementary Feeding of the Breastfed Child
“Feeding should be responsive, recognizing and responding appropriately to the child’s hunger and satiety cues.”
この記事を書いた人

執筆:三井 眞理子(みつい まりこ)
一般社団法人こども保育支援協会 代表理事/管理栄養士・元栄養教諭
保育食支援士®を立ち上げ、現場に寄り添う知識を発信。保育園・行政・医療機関での栄養支援経験をもとに、「食を通して子どもの発達を支える」専門家育成に取り組む。
保育士・栄養士・看護師向けの研修や講座を多数実施。
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