「軟飯はいつから?」にもう迷わない|プロが教える“発達で見る離乳食”
2019年改訂の「授乳・離乳の支援ガイド」(厚生労働省)では、従来の
10倍がゆ・7倍がゆ・5倍がゆという硬さの段階表記は基準ではなくなり、
“その子の発達に合わせたつぶしがゆから始める” と明確に示されました。
この変更により支援の幅が広がった一方、現場では
「いつ全がゆ(全粥)から軟飯に移すか」がわからず悩む保護者や支援者の声が増えています。
そこで本コラムでは、学術的根拠にもとづいて“発達から読み解く食形態のステップアップ” を整理します。
全がゆから軟飯へ ― 月齢ではなく「発達のサイン」で判断する
お口の発達サイン
― 頬・舌・唇・あごが“連動”しているか ―
軟飯への移行を考えるとき、お口の中(舌・頬・唇・あご)がある程度協力して動いているかを見るのがポイントです。
✅食べ物を口に入れたとき、舌だけで前に押すのではなく、頬の内側の力と舌の力で食べ物を歯ぐきあたりにキープしている。
✅口の端(口角)が少しくぼむ → 食べ物を挟んでいる感覚がある。
✅頬がふくらむ →外側から食塊を支えている。
✅顎の上下・左右の小さな動き(カミカミするような動き)が出てくる。
赤ちゃんは最初、舌で前に押し出す動き(乳児特有の反射)が強いですが、
離乳食が進む中で徐々に「留めておく・集める・噛もうとする」に発達していきます。
こうした口腔機能の発達は、研究でも「食形態の移行と深く関係する」とまとめられています
身体の発達サイン
― “姿勢の安定=口の細かな動きの土台” ―
意外と見落とされがちですが、
全がゆ → 軟飯の移行に最も影響するのは体幹の安定です。
「えっ、立つことがご飯と関係あるの?」
と思うかもしれませんが、実はとても大きく関係します。
運動発達と食べる力の関係は、理学療法分野の研究でも示されています。
“姿勢の安定は、咀嚼や嚥下の安定を支える”という、発達支援では常識の考え方になります
だから、こんな身体の発達が見られたら◎
✅つかまり立ちやつたい歩きを安定して行えるか(段差や家具をつかまりながら移動する様子が見られる)。
立ったときに骨盤幅より足を広めに置き、つま先が外向き(外旋)になっている場合がありますが、見守りでOK!
これはまだ足底アーチや足部の安定が未完成なため広めの支持基底(=広い支持面)でバランスをとるためです。
✅座位や食事姿勢で体幹が安定している(背もたれなしでも上半身がよく保てる)かを確認する。
では、全がゆ → 軟飯に移すときは?
これらのお口・身体のサインが出てきたら、軟飯に少しずつチャレンジしてみてよい可能性が高いです。
月齢ではなく “サインがそろっているか” で判断する
✅食べ物を舌と頬でキープしようとしている
✅口角や頬の動きがサインになる
✅顎の小さな上下運動が出ている
✅つかまり立ち・つたい歩きが安定している
✅座位時の体幹が比較的安定している
ただし、安全性を最優先に。一口ずつ与えて、よく観察すること。
むせ・呼吸の乱れ・飲み込みの遅さなどがあれば中止し、言語聴覚士(ST)やかかりつけ医、理学療法士など専門家に相談してください。
まとめ
離乳食のステップアップは“月齢”ではなく “発達のサイン” で判断する時代へ。
2019年のガイドライン改訂以降、
「その子の発達に応じて進める」という大原則がより明確になりました。
発達を読み取りながら支援できると、無理のない安全な形態アップが可能になります。
そして——
こうした 「発達 × 口腔機能 × 食形態」 を
“現場で観察し、判断する力” は、
保育食支援士2級で扱う重要テーマのひとつ。
- 観察のポイント
- 発達段階の読み方
- 姿勢調整と口腔機能のつながり
- 食べにくさが出たときの対応
- 多職種連携の仕方
こうした“発達の視点”を持つ支援者が増えることで、子どもたち一人ひとりに合った適切な支援が可能になり、家庭と保育現場がより安心して子育てに向き合える環境が広がりますね。
より深く学びたい方には、保育食支援士2級資格講座をおすすめしています。
月齢だけにとらわれない「発達の視点を持つ支援」については、離乳食単元(2日間)の講座の中で、実践例や動画教材を交えて詳しく解説しています。
【補足・根拠】
-
離乳食ガイドラインの改訂
2019年に厚生労働省・農林水産省が共同で改訂した「授乳・離乳の支援ガイド」(第2版)により、従来の「10倍粥・5倍粥・7倍粥」といった粥の硬さの段階表示がなくなり、子どもの発達や咀嚼力に応じた「つぶし粥」からスタートし、形態を段階的に変えていく方針が示されている。
→ 厚生労働省・農林水産省『授乳・離乳の支援ガイド 第2版』(2019) -
口腔機能発達の重要性
食べ物を舌だけで押し出すのではなく、頬の内側の力と舌の力が協調して食塊を歯ぐきあたりに保持することが、嚥下の安定や次の食形態へのスムーズな移行に不可欠であることが、口腔機能発達の専門的研究で示されている。
→ 山下和代 ほか(2019)「乳幼児期における摂食機能の発達と評価」『日本摂食・嚥下リハビリテーション学会誌』第24巻2号 -
身体の発達と口腔機能の関連
つかまり立ちや伝い歩きなど体幹を安定させる動作は、口周りの細かい筋肉の動きを支える基盤となるため、足の向きやバランスの発達状態も軟飯移行の目安になる。
→ 木村尚子(2020)『乳幼児発達支援の実践』学研メディカル秀潤社 -
支援の視点の重要性
月齢だけで食形態を決めるのではなく、個々の発達のサインを的確に捉えて支援することが、子どもの自立した食行動の促進と、保護者の安心感向上につながる。
→ 松田智子(2018)「離乳食支援における発達視点の意義」『子ども保育研究』第12巻
参考文献
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厚生労働省・農林水産省『授乳・離乳の支援ガイド 第2版』(2019年)
-
山下和代, 他 (2019). 「乳幼児期における摂食機能の発達と評価」『日本摂食・嚥下リハビリテーション学会誌』24(2), 56-63.
-
木村尚子 (2020). 『乳幼児発達支援の実践』学研メディカル秀潤社
-
松田智子 (2018). 「離乳食支援における発達視点の意義」『子ども保育研究』12, 15-23.
この記事を書いた人
執筆:三井 眞理子(みつい まりこ)
一般社団法人こども保育支援協会 代表理事/管理栄養士
保育食支援士を立ち上げ、現場に寄り添う知識を発信
保育園・行政・医療機関での栄養支援経験をもとに、
「食を通して子どもの発達を支える」専門家育成に取り組む。
保育士・栄養士・看護師向けの研修や講座を多数実施。
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