離乳食中の「水分補給」に注意を――“だ液を出す”“噛む”発達を支えるために

僕たちって…食事中、だ液を出す練習中なんだ。なのにママったら、「食べづらそうだから」とすぐにお水を口に入れてくる。

汁かけごはんにしたらよく食べるよねーって言いながら、
汁にちょんちょんとごはんを付けて食べさせてきたりもして、僕だちお口の練習の機会逃してるんだよね💦

――実はこの“食べながらの水分補給”、赤ちゃんの口の発達にとって少し注意が必要なのです。

食事中の水分補給に注意が必要な理由①

よく噛まない・流し込む食べ方の「誤学習」につながる可能性

食事中に何度も水分を挟むと、噛まずに飲み込んでしまいやすくなります。
これは、吸啜(きゅうてつ)――つまり乳首を吸うときと同じ動きに近く、
食べ物を「噛んでから飲み込む」動きが身につきにくくなる可能性があります。

結果として、
噛まなくても飲み込める → 歯茎への刺激が少ない → だ液分泌が促されにくい
→ 咀嚼しにくい・飲み込みにくい → さらに水を飲む
という“負のスパイラル”に陥るおそれがあります。

このような関係は一部の研究でも指摘されており、
「咀嚼刺激の不足がだ液分泌や嚥下(えんげ)発達に影響する可能性」が示唆されています。
(※後掲の文献参照)


食事中の水分補給に注意が必要な理由②

水分だけでお腹がふくれやすい

赤ちゃんの胃はとても小さいため、水分で膨満しやすいです。
離乳中期ごろまでは「食べ物をお口に入れて、だ液を混ぜ、噛む」という
“お口のトレーニング”を優先する時期。

食事中に多くの水分を与えてしまうと、
食べる量が減り、咀嚼や嚥下の練習機会を減らす要因になり得ます。


では、いつ・どのように水分を与えるのがよい?

① 食前・食後が基本

・「いただきます」の前に、お茶を数口。
・「ごちそうさま」の前に、お口をさっぱりさせるためにお茶を数口。
→ 食事中は、だ液を出して、噛んで、飲み込む練習に集中できる時間に。

② むせた時の対応

背中を叩いて+お茶を飲ませる」は誤りです。
むせている最中は背中を叩かず、さするのが基本。
その後、「お口の中が空になったこと」を確認してから、
お口をすすぐイメージで少量の水分を与えましょう。


お口の発達のために

赤ちゃんは、食事を通して「だ液を出す」「噛む」「飲み込む」を少しずつ習得します。
特に、舌の左右運動が未熟な中期・後期の食形態時期は、
歯茎に食べ物を当てて噛む刺激もまだ少なめです。

後期以降に、歯茎で噛む刺激を得ながら咀嚼を進めることで、
だ液分泌が促され、飲み込みやすさも向上していきます。

このように、「食事=飲み込みまでの口腔機能トレーニング」と考え、
外的に水分を多く含ませすぎないことが大切です。


まとめ

離乳食中に頻繁な水分摂取を行うと、噛む・飲み込む発達に影響する可能性があります。
・だ液を出す機能を育てるためにも、食事中は水分を控え、食前・食後を基本に。
・むせた時は慌てて背中を叩かず、まずはお口の中を確認し、少量の水分で対応。
・これは「禁止」ではなく、“赤ちゃんのお口の発達を支えるための意識づけ”として重要です。

保育・看護・産後支援の現場で、こうした視点をもって保護者へ伝えることが、

“食べる力”を支える第一歩になります。

より体系的に、離乳食と発達支援の関係を学びたい方向けに
「保育食支援士2級」の資格講座を開催しています
口腔発達や咀嚼支援、保護者への伝え方を実践的に学ぶことができます。


参考文献

  1. シミオーネ M ほか(2018)「食品の構造的特性の違いが子どもの咀嚼運動制御に及ぼす影響」Public Library of Science (PMC6052439)

  2. カルホフ H ほか(2024)「乳幼児における摂食スキルの発達:だ液との混和・咀嚼・食塊の後方移動の観点から」Italian Journal of Pediatrics

  3. サンパロ=ペドロサ R.M.(2014)「出生から6歳までの口腔運動発達の記述」Revista Mexicana de Medicina Física y Rehabilitación

  4. ニクラウス M ほか(2022)「乳児期後半における口腔処理スキル発達と咀嚼刺激の意義」Wageningen University Repository

  5. メルボルン王立小児病院(The Royal Children’s Hospital)「だ液と食事時の役割に関するガイドブック」(RCH Saliva Control Booklet)


この記事を書いた人

執筆:三井 眞理子(みつい まりこ)
一般社団法人こども保育支援協会 代表理事/管理栄養士/保育食支援士 開発者。
保育園・行政・医療機関での栄養支援経験をもとに、
「食を通して子どもの発達を支える」専門家育成に取り組む。
保育士・栄養士・看護師向けの研修や講座を多数実施。

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